Friday, September 24, 2010

熱中症対策:学校に水筒OK?だめ? 水分補給で予防 対応は各校の裁量に

手洗い場行列/異物混入心配/スポーツ飲料許可を
 9月に入ってもまだまだ真夏日の続く日本列島。熱中症対策のため水筒を持たせる学校が増えてきた一方、水筒禁止という学校も多く、対応はバラバラだ。また、子どもたちが過ごす教室の大半は、エアコンがない。各地の“水筒事情”から猛暑に頭を悩ます学校の状況を探った。【田村佳子、五味香織、下桐実雅子】

 「体温より室温の方が高い時がある」(校長)という横浜市内のある小学校。休み時間になると児童が水を飲もうと手洗い場に殺到する。5分間の短い休憩では全員に順番が回らず、行列後部の子どもがあきらめて教室に戻ることがあったという。水筒は持参禁止で、手洗い場は唯一の水分確保の場だ。

 ある女子児童(8)は「授業に遅れると先生に怒られるから時計を見ながら待ってるけど、何度も飲めないことがあった」と憤る。その後、一人の児童の訴えで、授業中でも水を飲みに行けるようになったという。

 水筒禁止の理由について校長は「大規模校なので、水筒に異物を入れられる恐れなど安全が保証できない」と説明する。ある母親(38)は「蛇口にせっけんをつめる子や、蛇口をくわえて飲む子もいて、子どもが飲みたがらない」と心配顔だ。

 東京都杉並区の区立浜田山小では、保護者の声や子どもの健康を考え、8年ほど前に水筒持参を許可した。教務主任の田中耕一郎教諭は「休み時間に教室で飲むのが基本。衛生面の問題があるので毎日持ち帰るように指導している」と語る。

 新潟市立新潟小は今年初めて、夏休み明けに「水筒持参OK」の文書を配布した。川又健司教頭は「今年は教室によってはサウナ状態。水道水は生温かく、子どもたちが『ぬるいから飲まない』では困る」と話す。ほぼ全員が持ってくるという。

 なぜ水筒への対応は学校によってまちまちなのだろう。

 文部科学省は毎年、水分補給を促すなど熱中症防止の徹底を呼び掛けているが、水筒持参のような細かい部分は各校の裁量に任されている。その結果、水筒は「持参を要請」から「許可」「決まりはないが黙認」「禁止」まで同じ地域内でも学校ごとに対応に幅が出ているのだ。

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 体調維持のためエアコンの使用が推奨されているが、冷房設備のある学校は多くない。文科省施設助成課によると、全国の公立小中学校の普通教室の冷房設置率は07年度で10・2%。03年度から普通教室もエアコン設置費用の国庫補助対象となったため、98年度の3・7%より伸びてはいる。とはいえ、全体のわずか1割だ。設置率が比較的高いのは東京23区だという。

 東京都杉並区はエアコン設置より屋上や壁面の緑化によるクール化を進めてきたが、新区長が方針を転換。来年8月末までにすべての区立小中学校にエアコンを導入する方針を決めた。担当者は「温暖化が進み、保護者からの苦情もかなり多かった」と打ち明ける。

 文科省が定めた「学校環境衛生の基準」では、教室の温度は「10度以上、30度以下であることが望ましい」とされるが、30度を突破する教室は珍しくない。

 07年に埼玉県熊谷市とともに観測史上最高の40・9度を記録し、「日本一暑い町」とも言われる岐阜県多治見市。21校ある公立小中学校には、普通教室にエアコンがない。市教委学校教育課は「設置してあげたい気持ちはやまやまだが、耐震工事が優先で財政的に厳しい」と漏らす。

 グラウンドの暑さも悩みの種だ。秋の運動会に向けた練習が本格化する中、同課は各校に対し、運動場にテントを設営して日陰を確保したり、十分な休憩や水分補給を心がけるよう呼びかけている。また、規定の帽子がない市立中の生徒にも、登下校時の帽子着用を認めている。

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 熱中症予防には水分だけでなく塩分やミネラルも必要といわれる。しかしスポーツ飲料を許可する学校は少数派だ。

 水筒持参を認める前橋市立総社小では、塩水やスポーツ飲料を推奨している。「カフェインが入っているお茶類は利尿作用があるため望ましくない」のが理由だ。内藤年伸教頭は「スポーツ飲料か麦茶を持参する子が大半だ」と話す。

 どのように水分補給をするのが理想的なのだろう。

 熱中症に詳しい国立環境研究所の小野雅司さんは「のどが渇く前にこまめに飲むのが大事。大量に汗をかく時は塩分が入ったものがよく、簡単に取るならスポーツ飲料」と話す。「水筒を持つのは水分補給の習慣づけにもなるので望ましい」と持参の広がりを肯定しつつ「学校はもう少し柔軟に考え、スポーツ飲料を許可してほしい」と訴える。

 水筒禁止の場合、家庭で取れる対策はないか。

 小野さんは「睡眠や朝ご飯をしっかり取るのは予防になる。衣類は汗を発散しやすい、首回りのあいたものを着るとよい」とアドバイスする。

 熱中症を起こすのは圧倒的に高齢者が多いが、次いで多いのが中高生。激しい運動が原因となる。児童も温度変化の影響を受けやすく、注意が必要だ。それだけに「学校がどれだけ目配りするかが問われる」と小野さんは強調している。

 ◇「指標計」の利用広がる
 気温に湿度などを加えた「暑さ指数」を測れる「熱中症指標計」を利用する学校も増えている。

 埼玉県熊谷市は今年、すべての市立幼稚園、小中学校に配布。30ある小学校区のうち一区でも暑さ指数が28を超えると、熱中症の危険性が「厳重警戒」にあたるランク4になったとして、ファクスで注意喚起する。7月20日以来「ファクスを送らなかった日はない」(市教委)という。

 私立麻布中学・高校(東京都港区)でも指標計を使い、指数が31を超えるランク5に達すれば、部活動の練習内容を軽くしたりした。

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